「8割が歯周病」ってほんと?歯周病の罹患率について
「30代以上の8割は歯周病」というキャッチフレーズを耳にしたことはありませんか?
実際に、「歯周病 日本人」でインターネット検索をすると、上位にくる記事の多くにそういった情報が掲載されています。罹患率8割というと相当高い割合ですが、本当なのでしょうか?
「そもそも歯周病ってどんな病気?」「そんなに掛かりやすいものなの?」といった歯周病にまつわる疑問についてもお答えします。
そもそも歯周病とは?
歯周病とは、『歯周ポケット』と呼ばれる歯と歯ぐきとの隙間に歯垢(プラーク)がたまり、そこに繁殖した細菌が炎症を起こす感染症です。ひどくなるにつれて、歯周ポケットが深くなります。
ある日、鏡を見て「前より歯ぐきが長くなった?」と感じたとしたら、歯周ポケットが深くなったせいかもしれません。こんなふうに、歯周病は自覚症状がたいして無いうちに進行し、気づいたときには歯が抜け落ちてしまうほど悪化しているといったケースも少なくありません。
歯周病は、細菌のえさとなる糖を含むものをよく食べる方や、歯磨きが十分にできていない方、喫煙者や糖尿病患者も歯周病が重症化しやすい「生活習慣病」の一種です。
日本人の歯周病の罹患率は?
それでは、「30代以上の8割が歯周病」という情報について、果たして実際のところはどうなのでしょう?
結論としては、厳しい基準でみると8割が歯周病といえそうです。もう少し詳しく見てみましょう。
「30代の8割は歯周病」という情報は、世界中で参考資料として引用されている歯周疾患に関するデータ「地域歯周疾患指数(CPI: Community Periodontal Index)」から広く知られるようになりました。
ここでは歯周病疾患の段階を0~4までに分けているのですが、8割という数字は、0を除く1~4までの段階すべてを含んでいるものになります。
8割に含まれない0段階は「健全」と評価される状態です。
3段階が浅い歯周ポケット、4段階が深い歯周ポケットがある状態なので、これらは完全な歯周病といえます。1・2段階に関しては、出血が見られたり、歯石がついてしまっている状態なので、歯周病になりたて、もしくは歯周病に近い状態といえます。
まだ初期の段階の歯周病も含むので、8割というのは厳密な基準でみたときの数字といえそうです。
日本の歯周病疾患の実態は?
それでは、実際の日本人の歯周病の罹患率は、どのようになっているのでしょうか?
厚生労働省による2005年と2011年の歯科疾患実態調査の結果を比べてみると、実際にはやや減少していることがわかりました。
WHO(世界保健機関)が行った前出のデータCPIの国際比較によると、世界的にみても、日本の状況は良好です。ここ数年でも、歯の健康や生活習慣病に関する意識が高まってきていますから、「30代以上は8割が歯周病」という情報が良い影響につながったといえそうです。